記事について

著者 :

عائشة ستاسي

日付 :

Sat, Dec 27 2014

カテゴリー :

Misconceptions

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なぜイスラームでは豚肉が禁じられているのか

なぜイスラームでは豚肉が禁じられているのか

 

(前半):神の法に従うということ 

 

 

人生の包括的な生き方であるイスラームは、人間の構造として重複する身体的・精神的・感情的な健康を(それぞれには異なる側面があるものの)考慮に入れます。神は、私たちが神を信頼することこそが現世・来世での成功を達成するための道であるということを説明するため、導きの書であるクルアーン、そして預言者と使徒の模範を私たちにお与えになりました。

ムスリムは神を崇拝し、神の法と規定を守り、神のご満悦を得るための努力に一生を費やします。それらの規定の一つには、豚肉(あるいは豚製品)を消費することへの禁制があります。

まず、世界中で食されている豚製品から、一体どのような有害性があるのかと疑問に思う人も多いかもしれません。あるいは、豚肉には人体に有害な寄生虫や病原菌が含まれているという事実が、それを避けるもっともな理由であると映るかもしれません。しかしながら、ムスリムが豚肉を食べることを禁じられているのはなぜかということを分析すると、上記のことは二次的な理由に過ぎないということが分かります。ムスリムにとっては豚肉を食べないことは、ただ単に神がそれを禁じられたからという理由だけで十分なのです。

 “かれがあなたがたに、(食べることを)禁じられるものは、死肉、血、豚肉、およびアッラー以外(の名)で供えられたものである。”(クルアーン2:173) 

なぜ神があるものを許可し、他のものを禁じられたのかという理由は、私たちには分からないかもしれません。豚肉の件に関しては、クルアーン6章145節にあるように、神が“それは不浄である”と述べていること以外には理由について言及されません。ムスリムは神の戒律に、その理由を探ろうという必要性を感じることなく、進んで服従します。さらに、信仰者とは神の言葉を聞くと、すぐさま服従するものであると神は明白に述べています。

 “本当の信者たちは、裁きのため、アッラーと使徒に呼び出されると、「畏まりました。従います。」と言う。本当に、そのような人々こそ栄える者である。”(クルアーン24:51) 

 “信仰する男も女も、アッラーとその使徒が、何かを決められた時、勝手に選択すべきではない。アッラーとその使徒に背く者は、明らかに迷って(横道に)逸れた者である。”(クルアーン33:36) 

信仰者は、神こそが最も英知に満ち溢れ、最も公正であることを理解しており、神の支配は、それが物理的・感情的・精神的なものであれ、私たちの日々の暮らしにおける必要性を益するためのものなのです。創造主は、その被造物にとって現世における生活と、来世のための準備において何が最善なのかを熟知しています。ムスリムが豚肉を消費することは、生命の危機にあるような緊急の事態以外には、いかなる状況においても許されていません。緊急の差し迫った状況においては、禁じられている物事は許されるようになります。

神は私たちがすべての善き合法なものを享受することをお許しになり、私たちの信仰・健康・幸福・精神にとって有害なものを禁じられます。従って、ムスリムは禁じられたものを食することにおける危険性を鋭く認識しており、たとえそれが更なる努力や出費を強いたとしても、確固として許された食物の調達を優先するのです。

もしも、ある信仰者が知らないうちに、または誤って豚肉を消費してしまった場合、その人物に罪はありません。神は、知識なく、または意図的でなく、あるいは忘れて犯してしまった過ちに対して、懲罰を与えることはありません。しかし、ある信仰者がその飲食物・医薬品などの中に豚肉や豚製品が入っていることを確信するか、あるいはその嫌疑がある場合、その人物がそれを消費することは許されません。そうした疑いがある場合、成分を調べるか、その詳細を尋ねる努力をしなければなりません。近年においては成分や製法の情報は難なく入手できます。豚肉または豚製品は少量・多量であるかどうかに関わらず、禁止されます。

イスラーム学者たちは、不浄物(この場合は豚製品)の変質が禁止の解除となるかどうかの問題で見解を相違にします。 The Islamic Organisation for Medical Sciences(イスラーム医学団体)は、ある物質(食品、薬品添加物など)が他の物質に変質した場合、禁止が解除されるという見解を示しています。しかしながら、豚から派生する肉類(ハム・ベーコンなど)を消費することが禁止されているということには疑念の余地がなく、そこに見解の相違もありません。

近年のメキシコ・北アメリカにおける豚インフルエンザの発生に際し、一部諸国は豚を大量殺処分にするという決断を下しましたが、豚が人体に有害な寄生虫を媒介しているということには十分すぎるほどの科学的根拠が存在する上、長年に渡って、豚はインフルエンザが繁殖するための理想的な温床であると見なされてきました。

 


脚注:

             アッ=タバラーニー(アル=アルバーニーによって真正であると分類付けされた伝承)。

             サウジアラビア・ファトワ(イスラーム法裁定)発行学者評議会。

(後半):豚は不浄なのか 

前回の記事では、ムスリムが豚肉と豚製品を避ける主な理由について述べました。つまり、神がそれを禁じたからです。人類だけでなく、他に存在する全ての創造主として、神は何が私たちにとって良いものなのかをご存知であり、神は私たちが賢い選択をするための導きを遣わされました。丁度、誤ったプログラミングによってコンピューターが正しく作動しないのと同じように、人間も正しい栄養状態になければ、活動出来ないのです。イスラームは精神・感情・身体的健康の相互作用を認識している包括的な宗教です。人が飲食するものは、健康で幸福な状態への直接的な影響を及ぼします。

ウイルス学者たちは長きに渡り、豚がインフルエンザの理想的な温床であることを認識しており、豚インフルエンザという最新の脅威が豚を発祥としたことには何の不思議もないのです。細菌学と免疫学の権威であるグレアム・バージェスは述べます。「一般的に鶏で成長するウイルスは豚でも成長することが可能であり、人間で成長するものは豚でも成長することが出来るのです。それゆえ、我々は豚がウイルスのるつぼであり、現実に新たなウイルスを生み出す役割を担う可能性があると見なしています。」

豚は寄生虫、バクテリア、そしてウイルスを媒介することで知られています。嚢虫症とは、豚の条虫である有鉤嚢虫によって引き起こされる感染症です。条虫の幼虫が人体に入り、嚢胞を形成させることによって感染が生じます。有鉤嚢虫が脳内に達してそこに嚢胞をつくると、その症状は神経嚢虫症と呼ばれます。豚に寄生する条虫は世界中で見出されますが、それは豚が放し飼いにされて自由に歩き回り、人糞を食べる貧困国・途上国において最も問題になります。この感染症は近代的な先進国においても発生することがありますが、アメリカ疾病予防管理センターは、豚の食用が禁じられているムスリム諸国では非常に稀であると報告  しています。

旋毛虫症とは、旋毛虫という線虫の幼虫に感染した肉を、生もしくは生煮えのままで食することによって引き起こされます。感染は野生の肉食動物において最も頻繁に起こりますが、家畜の豚にも発生することがあります。アメリカ疾病予防管理センターは、伝染性の旋毛虫の嚢胞を含む食肉を人が食べた場合、胃液が嚢胞の殻を溶かし、旋毛虫を開放することを警告しています。

旋毛虫は小腸を通過し、1〜2日以内に成虫となります。生殖活動の後、成虫の雌は卵を産み付けます。それらの卵は孵化して幼虫となり、動脈内を移動し、筋肉の繊維内で被嚢を形成(つまりカプセル状に変化)します。この被嚢状の旋毛虫が含まれる肉が消費されることによって感染が起きます。生の豚肉を食べることの危険性が認識されるようになって、また豚への生ごみの肉の餌付けを禁止する条例が出来てから、旋毛虫症の症例は世界中で急減しました

豚は雑食性の動物であり、植物と動物の双方を食べますが、昆虫の死骸、ミミズ、樹皮、腐敗した死肉、生ごみを食べるのはもちろん、共食いをすることもあります。豚には汗腺が非常に少ないため、体内の毒素を完全に排泄することが出来ません。農場における慣行が人体への感染に直接影響を及ぼしているという新たな証拠も出ています。

一般的に、豚は多くの近代的な農場において、悪臭の漂う小さな空間に閉じ込められています。また研究によると、豚はたびたび抗生物質に耐性のある黄色ブドウ球菌を媒介しています。薬剤への抵抗力を備えたこれらのバクテリアは私たちの食卓に並び始めており、米国における最新の研究によると、49%の豚と45%の豚農家が、18,000人もの米国市民の生命を毎年犠牲にするこのバクテリアを宿主としているのです

 “かれがあなたがたに、(食べることを)禁じられるものは、死肉、血、豚肉・・・である。”(クルアーン2:173)

 “それは不浄である”(クルアーン6:145)

ムスリムが豚肉を食べること、そして豚製品を避けるのは、神によってそれが禁じられたからです。しかしながら、豚の生態の仕組みを少しでも調査すると、それが実際に不浄な動物であることが明らかになります。健康的かつ自然的、そして純粋な食品の消費に興味のある人々は、豚肉と豚製品を控えることに余念ないのです。

 


脚注

          豪州クイーンズランドのジェームズクック大学教授。(http://www.abc.net.au/news/stories/2009/04/27/2554021.htm)

          http://www.cdc.gov/ncidod/dpd/parasites/cysticercosis/factsht_cysticercosis.htm

          http://www.cdc.gov/ncidod/dpd/parasites/trichinosis/factsht_trichinosis.htm

          http://www.scientificamerican.com/article.cfm?id=sick-farms-infected-food

            http://www.scientificamerican.com/article.cfm?id=new-drug-resistant-mrsa-in-pigs